暫く来ないうちに首都は少しずつ形ができつつあるように見えた。元の形は知らないが,それ以上の町になろうとしているのは明白だ。初めて来てから,もう何年になるのだろうか。フレンドシップ橋がメコンを挟んで出来て、タイとラオスとの交流が容易になった頃の事だった。もっとも,その時は、橋はできていても通関の建物が未完成で,船で渡ったことを覚えている。
国会や政府の建物がきれいに配列しているように見える。町もきれいになった。新たに寺院も建設中であった。今、ヴィエンチャンは前に進みだした。人々の表情も明るい。これは、何よりだ。昔のままの仏塔(ストウーパ)に雑草が生え、妙に郷愁をそそる。以前以上に、気に入ってしまった。
“春来たりて.草、自ずと緑し(あおし)”
ここは,ラオスの首都、ビエンチャン。今回は、ラオスの「古代織り」を中心に話を進めてみよう。
私は,以前から,ネパール、インド、チベット、ブータン、タイやラオスの古代織りに興味があった。質感、デザイン、染め、織り方に文化が反映しているからだ。その状況にあると,物事がスムースに動き始め,なかなか良い視点を得られるからだ。この副産物は大きい。
ラオスと言えば、サムヌア織りと言われるほど、近年、世界的にその知名度は上がってきている。今では、タイや欧米のコレクターが増えてきた。趣味としても,上品だ。本来のアンティックな古いものは、当然、値がはるが、最近はまた昔の織物が復活してきた様子である。近代化に向かうラオスではあっても、古式の織物の民族衣装を着る女性は増えているという面白い現象が今起こっている。新しい時代に向けて、伝統は重要だし,力になると思うのだが,ノスタルジーの行き過ぎは一種の病気と言ってもいいかもしれない。それは逆に力を奪ってしまうのだ。新しいものと伝統の素晴らしいものとを自然に、上手く融合させる事、そして多様性が好ましい。それはどこの国にも当てはまると思う。

悲観論も生じたが、全体としては,世界は少しずつ良くなっているといわれる。特に電子テクノロジーの進化は素晴らしい。

老子に依れば
“名無しは天地の始めにして,有名は万物の母”
という。形のない事,ものでない事,無に気づくことは、天地の始め,創造性という意味である。
有名とは,名があるという事は、形がある事、もの,物質を意味する。これは生活の繁栄を意味している。その両者が出会うとき、世界は新生する,という意味である。シヴァ・シャクティーである。

ラオスはべトナム同様に、想像以上に変貌した。長い戦火の歴史の後、今の平和がやってきた。そして今や豊かさはアジアに集中して移動しつつあり、その広大な宇宙空間から,新たな豊かさが生じてくるというヴィジョンが現れてきた。面白そうだ。
ラオスは新しければ何でもいい、といった国ではない。合理性だけにとらわれる国でもない。べトナムのように急いでもいない。ただ、ラオスの人々は、例え国家等なくても,生きて行く事が出来る大地のしたたかさと知恵がある。地球現住民ならではの生命力、そして粘り強い静かなヴァイタリティー、宗教と文化,伝統の力があるからだ。ガッツがある。
といって古いもの、伝統的なものなら何でもいい、という訳でもない。
只、古いものの中には、恒常性、エヴァーグリーンと言われるものも少なくない。古い伝統的なもので、未だに新しさ、新鮮さを失わないものも多いのだ。良いものは残るのだ。

アジアの人は,柔軟だね。尤も、それは本来どこの国にも当てはまることかもしれない。
嘗ては,“百万頭の象の国”。そして今ではラオスの総人口は,550万人。ビエンチャンの街を歩いていても、ラオスはモンゴロイド系では一番と言われるほどの美人の国。そして、元来、ラオスの人々は、アフリカ人にも言えるが、アジア人、日本人同様に、着飾ることが好きなお洒落な民族なのだ。このことが,生全体を豊かにしている。
さすがに、ラオスの美人たちは、シンと呼ばれる民族衣装の長い巻きスカートやショールを見事に着こなしている。ミニスカートや短パンなどより,ジーンズなどより,ずっと色っぽい。黒、紺、藍、緑、紫といった地色をベースに、粋な柄やハイセンスの幾何学模様が、ここでは、独特のヴィエンチャン・スタイルを創りだしている。それがラオスの誇りでもあり,喜びである事が素晴らしい。学童たちも,柄は地味だが,女生徒は、制服の、足首までの長めの巻きスカートをはいている。

最近になって,織物のラオスが復活してきたのだ。この事は象徴的で,他の産業にも、良い影響を与えるのだ。
幾何学的な、菱形を多く使った極彩色の織物には目を見張ってしまう。ものによっては、フレームに入れて曼荼羅として使ってもいい。これは私が既に実験済みである。部屋のアクセントとしても、上品なパワーをそれとなく醸し出す。寛ぎや集中力を生み出すのだ。テーブルクロス、クッションにも、良い柄を使えば、部屋が一段と素敵になる。

織物の装飾方法も、色々あって、日本の織物とも比べてみて、アジア共通のものやセンスが見られることであろう。部分的に色糸を使い、縫い取る方法、浮き技法,つずれ織り技法、そして機織り機にも独自のものがある。

“ Seeing is believing.”
*仏塔の写真は、タートダム(黒塔)と呼ばれ、アメリカ大使館のすぐそばに在る。言い伝えによると、昔、タイ(当時のシャム)が攻めて来た時、ヴィエンチャンを守った龍(ナーガ)がすんでいると言われる。力を感じるストウーパだ。
