2007年4月24日火曜日

飲茶3 お経を流すジュース屋さん

 お経と言っても,仏教のお経である。お経のテープを聴かせながら、ジュースやシェイクを売る店がある。
 お経も,派によって、様々な、トーンやニュアンスの違いが在る。他に、スピリチュアルな、お経としては、イスラムのアザーンやヒンドゥーのチャントもある。意味はともかく,そのディープなトーン,言霊的な意味が,大きい。


 仏教のお経といっても、渋いトーンや波動に特徴があり,仏教のお経の中でも、音楽としても中々なのが、“チベット語とパーリー語”のお経であるように思う。日本の仏教のお経に比べると,音楽的と言っていい。
 お経は、もともとが“詩”なので、本来、音楽的なものなのだ。ロックが全盛時代の頃、よくお経が使われた事があったくらいだ。ゆったりとしたリズム、腹を意識させるサウンド、呼吸も整い、非常にストーンするからだ。
 仏教の“詩”は,こうも言っている。簡単に,一言で言えば、“自分の思考を落とせば、あなたは、光明を得ている”と。後は,只,“気付き”があれば良いだけだ。ストーンする訳である。

 “チベット語”のお経は、時に,銅鑼や太鼓、チベタンベル、そしてチベタン・トランペットという、長くて大きな低音の響く楽器で、腹から声を出すチベット語のお経と、よくマッチする。以前、ネパールのチベット族の村にいた時,近くのお寺から毎朝聴こえて来るこの音楽で、眼を覚ましたものだった。朝の目覚めは,毎朝,寛いでいて,覚醒すると言う素晴らしいものだった。

 人は,“楽しい事”,“寛ぐ事”、“面白い事”、“心地よい事”があると、脳内にエンドルフィンが溢れてくると言う。仏教、ヒンドウー教では,”アムリタ“(甘露)と言う。脳内麻薬、脳内モルヒネ(モルフィン)とも言われる,自前の能力だ。その能力は,瞑想に依って高められる。まず頭、そしてエゴを落とす事だ。

 シナジー的、相乗的な働きで、快感、覚醒、そして沈痛効果もある。そこから積極性も生まれてくる。又、記憶力、集中力、持続力も高まってくる。そんな時、頭も,心も,自律神経もチャンとしてくる。無理矢理,“楽しい”,“面白い”と思い込んでも全く効果はないが、楽しさ,面白さが、直に,真に感じる時、エンドルフィンが溢れ出すと言う。この能力、快感ホルモン、使わない手はない。楽しいイメージを心に描いても効果はあることがある。そんな体験を沢山しておくと,人生は楽しい。それが“生”に出会う事なのかもしれない。ブッダを始めとして,瞑想者は、その秘密を見つけた人といってもいい。

 “パーリー語”は、ゴータマ・ブッダが、当時、実際に使っていた言葉だそうで、源の“言霊”を大事にする,“タイの仏教”で使われている。意味も大事だろうが,トーン、言霊が大事とされて来たのである。深層心理に効くからだ。“シャンバラ”へのパスポートになる。

 イスラムのアラビア語の“アザーン”や、ヒンドウーのサンスクリット語の“チャント”のトーンやサウンド、そしてニュアンスも違うが、音楽的である事には,違いはない。心地よいトーンなのだ。確かに,アラビア語や、サンスクリット語(地上最古の言語と言われている)も魅力的なサウンドがある。拘り(こだわり)がなければ、いいものは何でも楽しめる。
 心地よい波動を“サウンデリア・ラハリ”(サンスクリット語、美しき波動)という。それは、シヴァ・リンガに代表される前記事「シヴァ・リンガ」参照)。言語的な意味は良く判らなくとも,深層の意識に作用するほどの力や魅力がある。普通は音楽とは考えないだろうが、スピリチュアルな音楽である。インドでは,音楽とは,元々その為に出来て来た、と言われる所以である。何時か,ヒットパレードに連ねる事があるかもしれない。波動文化の,原点でもある。21世紀なんだから,そのくらいの事は,体験して,知って欲しいと思う。

 そんな“パーリ語”のタイのお経のテープを聴かせながら、ジュースを売っている屋台の店がある。カオサンの一本裏の通り、ランブトリ・ロード、ビエンタイ・ホテルの近くで,月曜日以外、毎日やっている。
 マンゴー、ココナッツ、パパイア、アップル、ドラゴン・フルーツ、パイナップル、イチゴ、スイカ、バナナ、オレンジ、ライム、紅茶やドリップ・コーヒーも、やっている。味も,内容も100%天然なので,美味しい。大きな紙コップに入った、マンゴーシェイク、ココナッツシェイクは,人気が高い。スイカやコーヒー、オレンジジュースも旨い。

 屋台の前の石段に腰をかけて、近所の猫の親子と戯れながらの,“一服”は中々のもの。“一切皆空”、になると、邪念がはいらず,純粋に“味わい”を楽しめる事が判る。食事の時もいいかもしれない。インド音楽同様に、悪い波動がないので、消化も良く,健康にもいい筈だ。

 “知る人ぞ知る店”ではあるものの、欧米人、日本人、タイ人、インド人を問わず,いつも繁盛している。よっぽど、遠いところにいるか、急いでいれば別だが、バンコクにいるときは、一寸、遠くにいても、つい来てしまう。不思議な,吸引力がある。値段も安く,中身も濃いのが人気の秘密。お客同士、顔を合わせる事が多いと,友達になってしまう。女性客も多い。音、雰囲気、味わいといった波動に敏感なのだろう。

 そして、そこの親父が、毎日ではないが、よくお経のテープを流しているのがユニークだ。無口な男だが、タバコを切らしている時等、タバコもサービスしてくれたりする。味と値段で勝負して、看板代わりにぶら下がっているメニューの最上段に,“ノー・ネイム・カフェ”(名無しのカフェ)と言う店の名前が,殴り書きで書かれているのがご愛嬌。お経のメロディーで、寛いでいる猫の親子が,お客に甘えてくる。

 甘露、甘露!(この言葉の意味については、前記事「甘露(アムリタ)」参照)