2007年3月30日金曜日

美味しいもの7 マンゴー・レイン

 マンゴーのシーズンになってきた。町中にマンゴーの香りが広がっている。
それだけで,気分がハイになってくる。町中が,マンゴー色に包まれる。
マンゴーはフルーツの王様とも呼ばれ,原産地はインドだが、東南アジアに分布し、500以上もの種類があると言う。タイ、ミャンマー、ラオス,マレー、ヴェトナム、カンボジア、インドネシア、ボルネオ……。季節になれば、何処でも食べられ、南アジアはマンゴー色に染まる。
ちなみに,フルーツの女王はと言うと,タイ、ラオス、カンボジア、マレーシアの“ドリアン”と言う事らしい。
インドでは、マンゴーは,“アーム”と呼び、タイでは,“マムアン”と呼ばれ,一般には60種類ある内の5種類ほどが特に有名である。そして、3月から6月頃が最盛期となっている。
一年で。一番暑い時期だ。時には40度を越す。
だが,美味いマンゴーがあれば乗り切れる。逆に暑くなれば,マンゴーの季節である事を思い出す。
丁度,開花し始めたマンゴーの花が咲く頃、暑さが本当に暑くなる頃,バケツをひっくり返したような、スコールが頻繁に訪れ、開花したマンゴーの花に降り注ぐようになる。
“マンゴー・レイン”と呼ばれる。

 インドの“ホーリー(クリシュナの祭り)”,タイの“ソンクラン(水掛け祭り)”は,その時期に行われる。
ホーリーは,カカラという木の実からとった、赤い水を掛け合うのだ。インド中で行われ,春の祭典になっている。
その日は,覚悟を決めて、赤い水をかけられてもいいような服装で外に出る。帰る頃には,頭のてっぺんから,足の先まで真っ赤になっている。

 ソンクランはタイの正月にあたり、国中、町中、村中で,水を掛け合うのだ。
インドのホーリー同様に,国家的な祭典である。勿論、国中が休みになる。
マンゴーはヒンドウー教の神、そして,ヴィシュヌ神の八番目の化身、“クリシュナ(ハリ)”を象徴するフルーツでもある。

 そんな訳で、“マンゴー・レイン”は、ロマンティックで、特別な,豊穣な雨なのだ。
楽しみ、喜び,歓喜、美味しいもの,祭りや正月とも、ほぼ同義語なのだ。
好きな言葉である。
マンゴーの実る時期は、アジアの正月と言ってもいいかも知れない。
全ては,マンゴーの季節から始まる。
“王道楽土”はマンゴーなしではあり得ないのかも知れない。
ハッピー.ニュー.イヤー! 全ての人の顔がほころんでくるのだ。

 タイには60種類位もあると言われるマンゴーだが、中でも,“ナム・ドクマイ”(花の雫)と言う粋な名前の品種は、香りも優れ、最も美味で、その柔らかい果肉は甘みも強く,豊かなこくと酸味のバランスが良く、タイ・マンゴーの中でも“キング・オブ・キングス”との評価が高い。

 マンゴー・シェイクにしても,そのまま食べても、ジュースにしても、ラッシーにしても、アイスクリームにしても、プリンにしても、フルーツの王様と言う言葉の意味が納得できる。
インドと同様にタイでは,マンゴーは料理の食材としても使われ、特に熟していない青いマンゴーはチャツネ(漬け物)やカレー料理、スープにも使われる。
マンゴーなくして,インドもタイも語れない。

 マンゴーにはβカロチンが多く,体内に入るとヴィタミンA(レチノール)に変わり細胞の老化を防ぐ作用がある。生命力が高いということだ。当然美肌にも効果がある。
他にも,抗がん作用、増血作用も顕著であると言う。勿論、ヴィタミンも豊富。
当然、食物繊維も多く,腸の働きを整え,便秘にもいいそうだ。
只,甘味が強く,糖分が多いので、ダイエット中の人向きではないようだ。
マンゴーには、又、カリュームも多く含まれており、高血圧、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞にも効果があると言う。現代病や老化防止の特効薬のようである。
とにかく,南国の食物は,フルーツと言わず,野菜と言わず、味も風味も強烈だが、桁の違うほどの力がある。
感覚的には、日本の何十倍とも言える程の強烈な太陽と、桁違いの多量の雨のお陰かもしれない。

 世界的にも有名なデザート、“カオニャオ・マムアン”は、蒸した餅米に完熟のマンゴーのスライスをのせ,ココナッツ・ミルクで和えて食べるのだが、その美味さに就いては、まるで麻薬のように癖になる。
朝食やランチにもいい。
今朝の朝食は,タイ風のドーナッツいくつかと、濃蜜なマンゴー・シェイク。

 他にもいくつか代表的な料理を挙げてみると、果肉を羊羹状にした“マムアン・グアン”も甘さと酸味の調和が美味い。
“カオニャオ・マムアン”とともに、タイならではの、點心(デザート)である。
“ヤム・プラドックフー”という魚(ナマズ)の料理,油で揚げた魚(ナマズ)に,青いマンゴーの千切りをのせ,ナンプラー(魚醤)やスパイスで調味したもの。乙な料理だ。実に美味い。
青マンゴーの梅酢漬け、“マムアン・チェーブアイ”は酸っぱくて,さっぱりとした食感。
漬け物としても抜群の魅力がある。

 日本に初めてマンゴーが紹介されたのは,明治に入ってからのことだそうだ。
タイからののマンゴーの輸入が始まったのは,つい最近、1987年だそうである。
そして今では,タイから5種類ものマンゴーが輸入されているそうである。
おいしいマンゴーが食べられるのは,幸せである。
幸せとは、マンゴーが食べられるという事だ。
そして、シーズンになれば,毎日食べられるというものだ。
当分、朝食はマンゴーになってくる。

                 ハリ・オーム!