2007年1月8日月曜日

GNPとGNH(幸福の目安)


 GNPとは、国民総生産量を意味し、経済の力を表す目安になっている。それは誰でも知っているし,日本の国もその物差しでは,常に世界の上位に位置しているはずだ。
 一方、GNH(Gross National Happiness)とは、国民総幸福量を意味するという。これは耳慣れない言葉だ。だが、この地球上には、そのGNH、[国民総幸福量]を国家目標にしている国がある。しかも、その事を誇りにさえしているという。「幸福である事」を基準に、国の将来やその発展を検討して行こうという姿勢である。

 その国とは、ヒマラヤ山麓にある小さな王国、「昇り龍」を国のシンボルとする「ブータン王国」である。2005年の国民調査に依ると、96.8%の国民が「幸福である」と答えているといわれる。言葉を、そのまま受け取ると「凄い!」と思ってしまう。国民総生産といった、物の量やお金の額ならば量れもしようが、幸福という「ものでない事」をどうやって量るのであろうか? と、いった素直な疑問が頭をもたげて来る。その発想も凄い!

 幸福の目安の一つとして、「足るを知る」という言葉が、仏教には在る。中国本土では、200年前に終わってしまった道教にも,日本の諺にも同じ言葉が在る。例えば、カップにコーヒーが半分入っている。そのとき、「コーヒーが半分しか入っていない」、ととるか、「コーヒーがまだ半分もある」、ととるかでメンタリティーは変わって来る。根本が変われば、波動も変わる。

 「足る事を知る人は常に豊か、まるで王のように豊か。」と道教は言う。他にも幾つも目安というものはあるが、幸福とは量れるようなものではない。その実情は、行ってみて,確かめないと何とも言えない。

 以前、と言っても1970年代の終わりの頃の事だったのだが、私はネパールのカトマンドゥの外れに住んでいた。その時,私の住んでいた家の直ぐ近くにブータンの大使が住んでいた。カトマンドウには、チベット仏教を学びに行っていたのだが、ブータン王国もチベット仏教。私が学んでいる事を知り、色々と補佐をして助けてくれる。私なら,ブータン人になれる、といってくれた。今から考えれば,幸福になれる,ととってもいいかもしれない。

 そして、ブータン王国という国が私を含めて、日本から学ぶ事は多いと考える事が、その時代のブータン王国であったのかもしれない。逆もまた真なり。日本が学ぶ事も多かろう。今でも、多くの日本人が、ヒマラヤの神秘の国ブータン王国の手助けをしている事と思う。想像上では、日本のふるさとのような国、或いは夢のような国かもしれない。

 彼は英語も上手かったし、大使だから、きっとエリートなのだろう。
ほんの少しの日本語も知っていて,やたらと使いたがる。
チベット人同様に、とてもいい人だった。
日本のお茶、お菓子や蕎麦を馳走し,本や写真を見せると,目を輝かせていた。
その時点では、日本こそがブータンが目標とする国であったようだ。
当時、勉強中で離れる事が出来ず、自分の用意が整っていれば、そして彼に頼めば、ブータンの入国ヴィザもそれこそ簡単に取れたと思う。

 1950年代、インドの瞑想家、ラーマナ・マハリシが「私とは何か?」というテーマを世界にメッセージとして送った。それは、世界に探求、瞑想の機運が起こったきっかけでもあった。今や、少しずつだが価値観の逆転も起こり、世界的にも、「幸福とは何か?」という話が当たり前になってきた。嘗ては、「国民は国の為に何が出来るか?」と問うた、アメリカの大統領もいた。それが、今や、「国は国民の為に何が出来るか?」を模索する姿勢の国が現れた。これこそが,新しい。今や,世界の魁(さきがけ)となった。

 今、私が活動拠点としている「タイ国」の「タイ」と言う言葉も、「自由と幸福」を意味する国名である。自由と幸福とは同義語に成っている。タイ国に於いても、ブータン王国と言う国は、様々なレベルで興味を抱かせている。同じ仏教国である点、国民の幸福を第一に考える国である点、又、先日、タイの国王の在位、六十周年記念式典に訪れたブータンの皇太子が、「ご」という和服に似た民族衣装をまとい、しかも男前で格好よい事等が話題になって,世界の王室の中でもナンバーワンの人気である。

 今,最も注目すべき,そしてGNHについて、実質的に、学ぶべき国ではないだろうか? 新たな指針が見つかるかも知れない。
 朝のカンチェンジュンガ(ヒマラヤ、第三の高峰)も素晴らしいだろうし、石焼の風呂というのにも入ってみたい。中央部と西部のヒマラヤは体験済みだが、東のヒマラヤにはまだ行った事が無い。トレッキングにも行ってみたい。ブータンの古代織りにも興味がある。食事は辛そうだが、どうだろう? ブータン独特の山椒があるという。

 一度は行ってみたい。

*写真は,パンガン島に現れた「昇り龍」。