2006年12月24日日曜日

骨の美学

 骨はあらゆる動物の中心に在る基本的構造体の要である。骨無しでは、蛸やクラゲのようにグニャグニャになってしまう。人も動物も、ちゃんと歩く事も出来ないし、鳥も空を飛べないし、魚も水中を自由に泳ぎ回る事は不可能だ。

 そして骨には、骨なりの美学がある。
私は、子供の頃から病院にある参考資料としての骸骨を人形のようにみていた。
その姿、形にある種の「美」を感じた。中々、格好いいと思った。
別に、死を意識するとか、気持ち悪いと言った感覚は皆無であった。
もともと、普段は見えないものの、誰でも持っている。

 近年、アメリカ辺りでも、一時、人骨、しゃれこうべのアクセサリーや衣料品が流行ったことがあった。遊び半分で、ネガティヴに海賊の旗や死のように考えている人もいない訳ではないだろうが、本来は意外と意味は深い。
インド、チベットのみならず、アメリカでもその事を知っている人はおおかった。
それは「肌の色を問わない」、という意味があると聞いた。
多民族国家のモラルのようなものになっている。
そして、そこからはポジティヴな波動に変わってしまう。

 昔、ピカソの日常を撮った映画の中で、魚をたべている姿が印象に残っている。手づかみで身を丹念にたべ、骨を丁寧にしゃぶっていた。
実に、旨そうに、楽しんで食事をしているように見えた。
その魚の骨は,実に美しかった。
骨を一言で言えば、カルシュームである。
だが、見えない部分で「スシュムナー」と言う「生命の源」となるものが、背随の中に尾てい骨から天頂(頭のてっぺんにある隙間)まで通っていて、自律神経、副交感神経の要となっている。

 骨は生命体の中にだけある訳ではない。人や動物の体格、骨格をフレームと言う。建物、船、機械の骨組みをフレームという。又、社会や政治等の機構、理論、思想等の構成や、組織、体制もフレームという。
窓枠、額縁、マインドに関わると「気分」や「気持ち」という意味にもなる。
背景や環境にも言える。こうなると、言葉の意味は際限なく広がって行く。
思想、物質、衣食住のあらゆる所に骨は生きている。

 建築を取り上げれば、必ず柱や梁、様々な構造を支える部分が総合的にアレンジされて全体の形を整え、重要な内部空間を在らしめる様になっている。写真は最近完成したバンコクのスワンナプーン国際空港の入口付近の一部であるが、構造体である骨を隠す事なく、そのままの姿を直に表している。変に隠したり、何かでカバーするよりも、思い切りがよく、よりシンプルで修理もし易く、化粧がない事から、好感が持てる。モノトーンの骨格に、白い昼光色の照明をメインに、所々、ブルーの光りをアクセントに使っている。クアラルンプールの空港と並んで、世界的にも見事な空港と言えるだろう。

 英語でNuts’n bolts(ナッツ’ン’ボルツ、ナットとボルト)とは、実質性、実用性の事を言うのだが、実質性に富み、見た目にも新鮮でいい感じである。余計な飾りがないのがなによりである。

 2番目の写真は、モーターサイクルのフレームであるが、軽く、しなやかで柔軟に撓るフレームが、良いフレームの特徴だ(DUCATIスーパーモノ、単気筒レーサー)。イタリアという国は,世界的にも、モーターサイクル、自転車の制作が得意な国。それゆえ、上質なクローム・モリブデン鋼が手に入り易く,クオリティーも高い。

 フレームが重いと乗りにくくなる上に、性能も落ちる。ただ、丈夫なだけでは、いいフレームとはいえない。軽く乗り易いフレーム、しかもタイヤやサスペンションへ出来るだけ負担がかからなければ、性能は上がって来る。と、いう事はコーナリングの際、パイプのフレームがリアクションを吸収し、旨く撓って(しなって)くれると乗り手は乗り易くなってくる。モノコック・フレームやチャンネル・フレームはどうしても、その撓りの部分の味わいでは一歩劣ってしまう様に思う。重量配分もフレーム次第で、べストな状況を生み出す事が出来、これも性能、乗り易さを決定づける。
 何よりも、「フィーリング」が大切なのである。味わいや趣きの要素が濃くないと、旨味は少ないものなのだ。ただ、やたらとパワーばかリのホットロッドのような怪物は、直線は速いかもしれないが、名車とはならない。味わいに欠ける。トータルな質、クオリティーが問われるのだ。

 フレームの性能は、数字には表れない。しかし、モーターサイクルにとっては、その性格を左右する大切な性能であり、非常にデリケートな部分でもあり、また、その味わい自体が魅力となってくる。特にマニアックな、手作りのモーターサイクルに取っては,フレームの美しさや性能は最も大切な部分である。フレームが見事だと、トータルなスタイルも格好よくなって来る。機能美と言うのだろうか、良いフレームは、見ても、乗っても美しい!
 最近のDUCATI(スポーツ・クラシック、或いはデスモ16)や、ハーレーのV-RODのフレーム(水圧でパイプを曲げている)は、マニアを意識して、実質的でしかもとても美しいように見える。フレーム(骨)だけでも部屋に飾っておきたい。

 良いフレーム(骨)は、其れだけでも美しい。