2006年7月10日月曜日

海南中華


 クアラルンプールの中華街の片隅で、おいしい料理を味わった。
屋台なんだけど、そこのお婆ちゃん、気合が入っていて、「美味いから、是非、食べておゆき!」とせっつかれた。

 私が泊まっているゲストハウスのすぐそばで開店しているので、出かけるたびに、そこを通らなければならない。それならば、一度は食べてみておいたほうがよいと判断して、注文した。

 それは、客家豆腐(ハッカー・トウフ)と言う料理。
名前からして、お客をもてなす為の特別な料理らしい。
一般に、南国に住む中国人の料理はインド、タイ、マレー、インドネシア、或いはヴィェトナムといったところの文化や料理とも融合し、本場の中国以上に、ソフィスティケートされた旨みを作り出してきたと言われる。単に中華料理というよりは、アジア料理という市民権も得ている。海南中華と言うらしい。

 ハッカートウフと言うと、絹漉し風の豆腐ときのこや野菜、トロトロになるまで煮込んだ豚の塊、蟹かま(蟹のかまぼこ)、ねぎやパクチ(香菜)のみじん切りの香りを浮かせた、スープ料理である。店によってはこれにビーフンが加わる。
ちょうど、東洋のポトフ(フランス料理)といったところだ。
誰が食べてもさっぱりとしていて、コクのある、バランスの取れた、美味い料理だ。

 食べ終わったころを見計らって、お婆ちゃん、「おいしいデザートがあるよ。」と言って、薦められるがままに、いただくと、なんとまあ、日本の「お汁粉」にそっくり。
甘みは抑えてあるが、程よい甘み。

 池波正太郎、描くところの「剣客商売」のうち、「十番斬り」に出てくる「小豆粥」を思い起こしてしまった。
古来、小豆粥は、邪気をはらうとされ、正月の十五日に「上之御祝儀、貴賎、今朝、小豆粥を食す。」と物の本にあるそうな。

 江戸時代の正月に戻ったようだ。