ワット(寺院)と宇宙。自分が自分であることを忘れた時、最も、その人らしくなると言う。人が個人としての意識を持つようになると、必然的に、宇宙を感じる。
宇宙という言葉は、世界と同様に仏教用語として、日本に伝わった。
ひふみよい(一、二、三、四、五)、回りて巡る、むなやこと(六,七、八,九、十)。
宇宙とは、時間と空間の事である。
又、「初」と言う語は、時間の始まり、の状況そして、「始」と言う語は、空間、次元の始まりとされている。 仏教以前に、インドでは相対性理論が、ほぼ,解っていたらしいから、宇宙と言う言葉が現れても、決して不自然ではない。
宇宙、世界ともども、私達の現実そのものであり、地球上に住む人間(他に住みようもないが・・・)にとっては、人と人、人と生物、自然、人と物との関係は、無限な拡がりを持っている。
人がより個人としての意識が高まるに連れ、自分は宇宙と分離していない事に気付く。
分離あるいは孤立というのは、様々な原因から生じた、幻想、イリュウジョンだった事にも、同心する。
さらに、洞察が深まるに連れ、考えると言うよりも、フィーリングなり、ヴィジョンなりの力が勝って、より、 リアリティを感じられるようになり、自分の状況や環境に微妙な変化が感じられるようになり、更に進むと、独創性、創造性が生じてくる。
これは自我(エゴ)を超えた次元にあるので、自我とは無関係。
自我は、自己がまだ、定まっていないひとの代用品。不安や緊張,などから出来上がっている。
様々な道は、山の頂上で出会うと言われている。
そこは天と地が出会うところ。
ワット(寺院)は、多次元的宇宙空間、その状況を人工的に再現したものである。
東南アジアのワットは、ヒンドゥー、仏教とが融合したものが多い。
カンボジアのアンコール・ワット、バイヨン、タプローム、バンティ・スレイ等は傑作である。
そこにある、空間、回廊、通路、何もない空間、樹木、水の配置は、宇宙エネルギーや、スピリットを集め、そこを訪れる人々に、ある意味、触媒となあってエネルギー、スピリットを人々に供給する。
日常的に不可能な事をシンプルに遂行する。
人々にとっては、エネルギーとスピリットの供給ステーションとなる。
手の届かなかった、夢や願いが、より手近かになってくる。
ワット(寺院)に入ると言う事は、魔法の時間と、特別な空間を体験する事なのだ。
特に、カンボジア、タイ、インド、ネパール、ラオス、スリランカ等では、恋人同士、一家総出で寺院の境内でピクニックをやっている。芝生や石の上に裸足になって、飲んだり、食べたり、吸ったりと、人々は楽しむ。興が乗ってくれば、音楽が始まり、ダンスが始まる。
スピリットは呼吸を通じ、その人が無心である時、感じられる。
スピリットが入ると、いずれエネルギーのフロー(流れ)が起き、次元が変わり、同じ場所にいても、環境、状況’が楽しく、素晴らしいものになってくるから不思議だ。
しかも、スピリットは、個々の内面を安定させる(力)をも持っている。
さて、宇宙は天空のみを言い表しているわけではない。
あくまで、時空間であるから、何処にだって,焦点を合わせれば、そこに宇宙がある。
日本では、宇宙は、禅から始まったと言われている。
様々なドゥ(道)と呼ばれる、遊びと学び、それと、礼とを一緒にしたようなメソッド(技法)がある。
華道、茶道,香道、合気道、剣道、柔道、弓道と数えだせば限がない。
例えば、剣道、剣術の場合、大切なのは相手との間合い。つまり相手との距離。安全な位置。相手が手を一杯に伸ばしても剣の先が相手に届かない距離。
それを、間合い、と言う。
達人ともなると、この間合いは、三分(7-8mm)辺りまで見切ると言うから凄い。
そして時間、この場合は、タイミングだ。
技量によほどの差がないかぎり、タイミングは一瞬。
この時期を逃すと、仲々、次のチャンスはやってこない。
そう言う訳で、奥に入れば入るほど、宇宙の妙が解ってくる。
「間」、には単に時の長短、遅速、タイミングの問題ではなかった。緩急も大切。柳生新陰流 活人剣、には次のような事が書かれているそうだ。「闇雲に剣を振り回す前に、心を治めよ」とある。また、「心は無心より生ず」。動きはそれに伴って付いてくる。心を制するものは身体も制する。その真意は、刀を抜かずして、万民を治めることにあったようだ。
剣は、人を切るものにあらず。また,能の開祖、世阿弥によれば、心無きは、人にあらず(後記事「能と世阿弥とドゥンドゥーミ」参照)、とか。
料理も、お茶やコーヒーを入れるのにも、また、魚釣り、様々なスポーツも間合いやタイミングは大切。材料を寝かせる、という知恵と言うか、間合い、湯加減、さじ加減、スパゲッティのお湯をきるタイミング… そう考えると、宇宙って言葉は、実に、生活に密着した、英知なんだなぁと思う。
宇宙は、たった今、ここにある。
2005年11月8日火曜日
ワットと宇宙
時刻: 23:30