自然と云うものが何であれ、山は大きく、空は無限に蒼く、広い。そして、山を目指すものは小さい。
低い所から見上げると、殆んど、不可能に見えることもある。少なくとも、登りは楽ではない。4000Mを越せば、空気は希薄になり、下手をすれば高山病にもなりかねない。場所に拠っては、氷河が、道を拠り困難にする。もし、そのチャレンジが、簡単で楽なものだったら、達成感は大したものではない。
壮大な肩を見せる、頂上。遠い夢が、眼前に挑んでくる。大きな目標が、インスパイアして誘いかけ、困難な道が待ち受ける。そして自分に気合を入れる。圧倒的なパワフルな魅惑が、神秘と冒険へと駆り立てる。空の色にもヴァラエティがある。アズライト、コバルト、タークォイズ・ブルー。まぶしいほどの力を持っている。
アーユル・ヴェーダ(インドの伝統的な医学)によると、普通の健康体の人の場合、大体、七年周期で、体中の60兆もの細胞が入れ替わるのだそうだ。ところが、ヒマラヤ・トレッキングの場合、一ヶ月位のトレッキングで、細胞が殆ど入れ替わってしまうと言われる。トレッキングの後、心身ともに、爽快感に満たされ、体にもキレがでて、しかも軽くなり、うきうきしてくる。なんとも言えない、幸福感に満たされる。
実際の山とは別に、私達の実生活にも山はある。
学生だったら、試験勉強がある。
新しい恋人との始めてのデイト。
病気に耐えているとき、結婚、家を買う、新しい仕事。若い女性だったらダイエット。
そのプロセスはマウンテン・トレックににている。
それぞれ、一つ一つが大きいかどうかは別にして、山と考える。
そして千里の道も一歩から始まる。
まずは、一つ一つの問題をトレッキングと考えれば良い。プラニング、一つ一つ丁寧に確認しながら、前に進む。他に道はない。定期的に「間」をとる。休息だ。疲れたら休む。それは、リスク・マネージメントと考えると良い。予想外の状況をも十分に考慮する。諦めるときは、きっぱりとあっきらめるか、時期を待つ。 中途半端ではっきりしないのが、一番困る。
もし目的の頂上に到達できたら、もっと遠くの山も視野に入ってくる。もし、それが「スピリチュアル」なものだったら、その旅人は、常に始まりにいる事に注意したい。過激なまでに猛烈なスピードに加速されている時代を、生きてきたものとっては、私達の多くはイナーシャ(慣性モーメント)が働き、どうしても、先に進みたがると言う、性質が身についてしまっている。本当のこと、リアルな事を楽しんだり、体験できたりするのは、常に「今」という事にも注意したい。
トレッキングはレースではないので、自分にあったペースを見つけること。ただ、闇雲に突き進んで、うまく行ったにしても、全体のプロセスはどうであろうか?
人は、過去の記憶や知識という、鳥かごに入って生きている。そして未来は夢。今を体験する事はかんたんだが、多くの人にとっては、難しい事であるらしい。丁寧に、慎重に確実にトレッキングを楽しんで欲しい。
2005年11月3日木曜日
マウンテン・トレッキング
時刻: 17:23