2006年10月10日火曜日

朝のクルーン・テープ(日常的な魔法)

 普段、町にいると,中々見る事は無いのだが、それでも、ビルの屋上に出て、天気がよければ、素晴らしい朝日に対面出来る。七階か八階建てのビルならば、十分だ。それも、朝の六時の少し前に行けば、出会える。

 朝のクルーン・テープ(天使の都、バンコック)は、天気がよければ、涼しくて気持ちが良く,晴れ晴れとする。場所にも依るが、チャオプラヤ川の向こう側、丁度、暁の寺(ワット・アルン)の辺りから,日は昇って来る。何とも、上手く出来ている。


 特に、昨晩あたりに一雨降った後は、スモッグ等、何処かえ消えてしまって、殊更、清々しい。チャオプラヤ川や、海が近いのもその理由だ。朝食を兼ねて、日の出を楽しむ。そよ風が素晴らしい。日常的な魔法。
 割と、インドの人は、朝に、夕べに太陽を見るために。わざわざ見晴らしの良い所までやって来る。インドやヒマラヤにいた頃は、殆ど、毎日、日の出や夕日を楽しんだものだ。小さな村でも、殆ど、村中の人が、魔法のショウを見にやって来る。もっとも、田舎に行くと、他には余り、楽しみも娯楽も少ない所為もある。
だが、どういう訳だか、飽きない。不思議だと思う。

 ここは、高級なホテルではない、またヒマラヤでもない。普通のホテルの屋上。ロケ−ションの良さで、朝日を見るためにやってくる人もいる。オリエンタル・ホテルやシャングリラ・ホテルの様な,超高級ホテルでは味わえないものがある。お金もかからず、気楽なのが良い。
 席を取って、メイドのおねえさんに注文をしていると、もうあちこちから鳥の声が聞こえて来る。テーブルの周りで,チュンチュンやっている。パンの耳が欲しいのだ。今朝は、セットのブレックファースト。といっても,他にはセット・メニューは無い。あとは、単品のオーダーだけ。朝から,ビールを飲む人もいる。この後、朝寝をするのだろうか?
 メニューはというと、ベーコンエッグ又はオムレツ、コーヒー又は紅茶、オレンジ・ジュースかマンゴージュース、トースト、トマトのスライスをバターで炒めたもの、これが旨い。黒胡椒をかけ、ライムを絞る。これで栄養たっぷり。それに、付け合わせの野菜サラダ。ライムがやはり旨い。何という事は無いが,旨い。

 コーヒーは、今は,タイのコーヒーが旨いと思う。タイの少数民族が、アヘンの代わりに栽培し始めたアラビカ種のものだ。程よい苦みがいい。お茶はやはり,チャイがいい。インド風が良い。英国風って言うのは、まずいものの代名詞。イギリス人が言うのだから間違いない。だが,朝食とフィシュ アンド チップスに限っては旨いと思う。

 話は、一寸、脱線するが、ドーヴァー・ソール(ひらめ)の天ぷらはうまい。トーストとコーヒー、紅茶の追加やおかわりも自由。何時も、2〜3時間かけて、朝食をとる。そこから,心にも、気分にも、ゆとりが生じて来る。ゆとりとは、遊びであって、知恵だね。無理が減る。何といっても,無難。難が無い。メディテーションにもなる。

 朝、沢山食べておくと、3時頃、お茶とスナックで間に合ってしまう。それに,朝、沢山食べておくと,一日中、ヴァイタリティーがあるのだ。代謝能力も広がる。
 朝早く,町のてっぺんにある、カフェ(レストラン)での朝食。日本人に出会う事は余り無いが、欧米人,タイ人、インド人、中国人、タイに通じた人達は良くやって来る。皆、日の出が好きなのだ。陽はいつでも昇って来る。日の出を楽しみながら、新聞を見たり,情報交換したり、ニュースの話題に花を咲かせる。今朝は、クーデターの話で持ち切りだ。少しは、良くなるのかな? 今や、『タクシンは何処へ行ったの?』何て言う、皮肉を込めた、
Tシャツも売られている。中々,楽しく,充実した時間が過ごせる。ナイトクラブならぬ、『モーニング・クラブ』と言った所だ。

 朝の日光浴。毎日くる事は無いが,月に一回位はくる事がある。月に一度の、お正月。普通のタイ式の朝食だったら、麺でもおかゆでも、飲茶でも安く済むのだが、たまには,トーストが食べたくなる。ベーコンエッグも食べたくなる。旨いチャイも飲みたくなる。一見無駄なようだが、無駄ではない。2〜3時間かけての,夜明けの朝食は、ヴァイタリティーを生む。気分は,ヒマラヤにいるようだ。プーン・ヒルやタトパニ、マナーリやポカラを思い出してしまう。ポジティヴに成れる。本当の自分に戻れてホッとする。そして長い一日が始まる。今日も,暑い一日に成りそうだ。

 予定や計画を算段する時には、特に良い。既に決まっている事も,ここに来ると、気分が変わり、計画が変わってしまう事もある。この場所には、力があるのだ。何の計画も無い時は、ホリデイ、今日は何をして遊ぼうかを考える。町にダイヴィングして、本屋や、地方の物産展を覗いてみようか? それとも,行きつけの、エアコンの効いたカフェで、一日中、本でも読もうか? クルンテープは、読書家が多い。そこで、誰かにも会える。
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