記憶にある方もいらっしゃる筈だが、一昔前に「サンフランシスコのチャイナタウン」と言う、一寸、メランコリックな歌があった。
チャイナタウンは、中国や台湾と言った中国人の国以外の国に於ける中国人の街、中華街である。当たり前の話だが、中国人の国の中では、中華街とは言わない。それ故,逆に、中国以上に中国の香りが強いかもしれない。中国以外の国の中華街は、その国の文化との間に、コントラストが生じて来るからかもしれない。又、中国本土のような、政治的な圧力がない分エッセンスが凝縮している。
知る限りに於いて、クアラルンプールとクルンテ—プ(バンコク)の中華街は、規模も大きく凄まじいエネルギーに満ちあふれている。
以前、マレーシアのペナン(中国人の多い街)で知り合いの中国人に聞いた話だが、中国人にとっての幸せとは中国の外に出る事なのだそうだ。
中国本土も全てとは言えないかもしれないが、沿岸部を中心に好景気に湧く地域も増え始め、それとともに国外の中華街も好景気、街のエネルギーもギンギンになってくる。頻繁に訪れる訳ではないが、何度か行くうちに、街の狭い横町や土地勘が次第に付いて来る。やがて、美味しい店、面白い店、知人も少しずつ増えて来る。面白い事に、そこに働く人は中国人ばかリではなくタイ人も多い。タイの人に取っては,中国はやはり異次元。
最近になって、クルンテープ(バンコク)の中華街には、香港、台湾、マレーシア、インドネシアからの資本投入が起き、「その勢い止まるとこを知らず」、の感がある。国際色も豊かで,タイの文化、ヒンドウー,仏教の影響も意図的に和している様子も見える。
チャオプラヤ・エクスプレスという、船のバスで「ラチャウォン」という所で下りて、道なりに5分程歩く。歩く程に中華色が次第に色濃くなって来る。屋台が並び、店は活気を帯び、人々が大声をだし、動き回って商売に精を出している。無数のフカヒレスープ、ツバメの巣、シーフード、飲茶の店が、味と値段を競い合っている。これらの材料の内、ツバメの巣はタイの特産であり、タイ人はそれほど食べないが,中国人はツバメの巣には目がない。中国人が此処に集まってきた理由の一つではないかと、思ってしまう。
食料品、家具、生活雑貨、あらゆるものが手に入る。値段も安い。横浜の中華街等に比べると、地域もずっと広く、恐らく中華街の外に一歩も出なくとも、殆ど生活に支障はないように見える。
「龍鳳」という、「朝青龍と白鳳」の時代を予感させる「金行(金、金製品の売買をする)」が何故か気になったし、どちらが旨いとは言い切れないのだが、ラーメンすらも、タイの味とは,個性を異にする。中国ならではの、特徴在る形をした建造物から電話ボックスまで、一寸したチャイニーズ・ショウとなってきていて異国情緒満点である。特に,町中に煌めく赤と金色の彩りのアクセント,中華風の隈取りと相まって、まるでバンコクの電気街、パンティップ・プラザのような熱気はすごい。