タナカ? タナカって誰? タナカって何?
それは、ミャンマーの言葉だ。別に、田中さんという人の事ではない。
ミャンマーに入ると、女達や子供達が、顔にペインティングをしているのを良く見かける。大人の男達や、イスラム教徒はしない。樹木の皮、根っこから取った絵の具であり、化粧品。
虫除けや日焼け止めの意味もあるという。
そこには、それなりの美学、流行もあって、女性や子供、それぞれが、思い思いに意匠を凝らしたタナカをしている。喜びや祝いの表現でもあると言う。一寸した,変身かもしれない。
白からベージュ色、黄色っぽいペインティング。さすがに、やかんの底の炭を塗った人は見ない。プリミティブと呼ばれる部族社会の人も、一寸、上流階級風の人もタナカをしている。
インドにもヘンナと言う、別に「変な」意味では無く、手や足に薬草から取った色を使ったボディ・ペインティングがある。今や,アジア、欧米、日本でも流行しているそうだ。又、ヒンドゥー教の聖者や、修行者が、額にペインティングしたり、身体に灰を塗ったりもする。ジャイナ教の人達も、サフランを第三の目に塗る。日本でも、お祭りの時、化粧というか、子供の顔に絵の具を塗ったりする。地球上の様々な所で、顔や身体に色を塗る。大抵の場合,おめでたいときに、色を塗る。
ネイティヴ・アメリカンやポリネシアン、古代のエジプト、多くの、アフリカの部族も、ボディと顔にペインティングを施す、文化、習慣がある。
顔や身体にペインティングを施すのは、地球上、沢山の地域で行われている。
ミャンマーは一寸違う。美容、日除け、虫除けの他に、熱帯の暑いミャンマーでは、皮膚にとって、涼しさ、リフレッシュの意味もあるという。それは、ここ何世紀も変わっていないと言われる。子供が生まれて、新しくお母さんに成った人なら、ターメリック(うこん)を混ぜるのだと言う。お産で疲れた身体を、黄金のように化粧するのだと言う。皮膚の新陳代謝を高めるのだろう。ターメリックのパックは、健康によいそうだ。カレーを沢山食べれば、相乗効果になるね。
樹々の樹皮や根っこは、水につけられ、石臼で挽かれて薫りのよい粉になる。そして、女性達は、入浴後に顔に念入りに塗り込める、という事らしい。そのモルタルを施したまま、旅にでたりもするし、儀式にも使い、日常生活をもこなすのだと言う。当然、社会的にも、医療上も、美容上も何の問題もない。
嘗て、王族が支配していた時代にも、女官達やメイド達は、タナカを手放す事は無かったそうだ。王族達も、タナカをしていたのだそうだ。一見、変な風習のようだが、日本でも、つい百年前までは、お歯黒や、眉毛を剃ったり、ちょんまげ、などという変わった風習があった事を考えれば、どうという事も無い。独特の,文化的美学なのだ。そういう国程,面白い。美学の無い国は、何事も合理主義に取り込まれてしまって、生きた心地がしない。
ミャンマーで、最も美しいタナカは、茶色系に金色のアクセントを付けたものと言われる。純金を使うので,かなり高価になる。王族の子女達は、そのようなペインティングをしていたらしい。特に、際立ったペインティングは、マンダレイが有名だそうだ。
仏像にもタナカが施されるという。この場合は、むしろ、パックのようで、タナカのパックは、あとが素晴らしく気持ちいいらしい。仏像もピカピカになる。新年の前夜祭は特に面白いらしい。まさにエスニックな習慣ではないか?
近代化が、少しずつ始まっているミャンマーだが、タナカの習慣は、今の所、変化なく続いている。
(撮影:ふくちゃん)