2006年8月27日日曜日

Glidelogy 2 (滑空学 2)


 鷲の中には、翼を広げると、2メートルを超えるものもあるという。
兎に角、大きい。
気流に乗っているときは、それほど、猛スピードで、飛んでいるようには見えないが、一旦、獲物
を見つけ目標が定まると、円を描きながら少しずつ、螺旋状に、適切な位置まで降りてくる。
そこで、集中力の溜めを作っているようにも見える。

 集中力というと、誤解が少しあるかもしれない。
それは、単に絞り込むという事だけではない。
絞り込むための反面、遊びというか、拡がり、ゆとりの様なものがないと、絞り込みは、うまくいかない。例えば、レンズで日の光を集めれば、集中力が生まれ、火が起きる。一方で、レンズの反対側は、大きく太陽に向けて,開かれていて、日の光を集めることができる。
道理である。
そのために、螺旋状の気流の動きに乗っている事が、必要事項となる。 野球やゴルフで言えば、バック・スイング、スイング、ヒッテイング、フォロー・スルーとなる。

 瞬間的な、鷲のダイヴイングの時のスピードは、ものすごい。 実際にすぐ近くで見ると、150Km/h以上出ているのかもしれない。 溜(ため)て温存していたエネルギーに加え、重力という強力な力をも、味方にしている訳だから、 超スピードが生じてくる訳だ。

 その上、臨海速度という、まだまだ神秘の領域に入ってくるのだが、140~150Km/hを超
えると、鷲と空気抵抗の関係に変化が起き、スピードが一段と伸びてくると言われる。
この変化する時点のスピードを、臨海速度と言うそうだ。何らかの変換が起きるのだ

 陸上競技でも、うまく、スピードに乗ってくると、体が透明になったように感じられ、軽くなっ
たように感じられ、無心の状態で、しかも、気分よく、ランナーズ・ハイになる事が、まれにある。
野球のピッチャーのボールが、ある速度を超えると、グーンと伸びてくると言われるのがそれだ。

 当然、鷲はその道のプロだから承知のすけ。 結果としてどういう事になるかも、判っている筈。
ダイヴして、弾丸か、ロケットのように、突っ込んでくる鷲の姿は凄い。 質量が変わってしまったみたいだ。その時は、羽ばたいているのではなく、翼で舵を取りながら、ミサイルのように飛び込んでくる。 その波動で、空気は大きく揺れる。
 
 獲物、魚を捕まえたあとのフォロー・スルーも見事で、申し分ない。 まるで、芸術を見ているようだ。
見ているものにとっては、あっという間の不思議な、濃密な無時間だった。